【誤解】
X線撮影やCTスキャンによる被曝の影響を、食物や水に含まれる放射性物質による被曝と単純に比較するのは間違っている。
同じ被曝量でも、一度に被曝するより、体内に入った放射性物質により毎日少しずつ被曝する方が影響が大きい。
【事実】
前半は正しいのですが、後半は間違っています。
線量率効果というものがあります。「同じ線量の放射線を受けても、線量率が低い場合(すなわち、長い時間をかけて放射線を受けた場合)ほど、生物効果が小さくなる」というものです。
放射線は人間のDNAを傷つけますが、この傷は治らないものではなく、少しぐらいの傷なら回復します。ですから、弱い放射線を長期間にわたって浴び続けた場合の害は、一度に浴びた場合の害より少ないのです。
分かりやすく食塩でたとえてみましょう。
食塩(塩化ナトリウム)というのは、実は危険な物質です。そのLD50(半数致死量)は、体重60kgの人だと180~210gです。もし200gの食塩をいっぺんに摂取したら、50%ぐらいの確率で死に至るでしょう。
厚生労働省は、日本人の食塩摂取量の目安を、成人で1日10g未満と定めています。1日に10gぐらいまでなら、食塩を摂取しても害はないというわけです。
すなわち、同じ200gの食塩でも、いっぺんに摂取するのと、1日に10gずつ20日間にわたって摂取するのでは、影響がまったく違うのです。
放射線もそれと同じです。1回のCTスキャンで6000マイクロシーベルト被曝するのと、1時間に6マイクロシーベルトずつ42日間(1000時間)にわたって被曝するのでは、後者の方が影響は小さいのです。
【誤解】
「ただちに健康に影響が出るものではない」というのは、いずれ影響が出ることを意味している。
【事実】
さきほどの食塩の比喩で考えてみましょう。
1日に10gまでの食塩なら無害です。しかし、ある日たまたま塩辛いものを食べすぎて、20gの食塩を摂取してしまったらどうでしょう?
その日だけのことなら、べつに影響は出ないでしょう。そう、「ただちに健康に影響が出るものではない」のです。
しかし、1日に20gずつ、毎日摂取し続けたら? これは塩分の摂りすぎです。いずれ身体に悪影響が出てくるでしょう。
これはアルコールや砂糖やタバコでも同じことです。たまたまお酒をいつもより少し飲みすぎた日や、甘いケーキを食べすぎた日があっても、ただちに健康に影響が出るものではありません。しかし、そんな生活を毎日続けていたら、いずれ健康を害します。
規制値を超えた放射線が検出された野菜や水の場合も同じです。規制値の数倍程度の量なら、一度や二度、口に入ったぐらいで、何の影響もありません。しかし、何年にもわたって同じ量を毎日摂取し続けたら、その影響が蓄積して、いずれ害が出るかもしれない。だから念のため、規制値を超える放射線が検出されたら、口に入れないようにしましょう……ということなのです。
ましてや、放射線量が規制値以下なら、何の問題もありません。
「食塩と放射線をごっちゃにするな!」と怒る人もいるかもしれませんが、そういう人は16世紀の医師パラケルススの言葉を思い出してください。
「すべての物質は毒であり、毒でないものは存在しない。毒と薬の違いはその用量による」
塩だろうと砂糖だろうと水だろうと酸素だろうと光だろうと、多すぎれば人間に害を及ぼします。
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